実機シミュレートのレシピ
その名の通り、実在する他社モデルをシミュレートする試み。開発者が行っている手順をご紹介します。
今回の解説記事では、サウンドメイクで、実在する他のイヤホン実機の音を似せる(シミュレート)手順についてご紹介します。
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ver 1.2 にて、HPS (Hi-end Simulate Pack) 、その名の通り、実在する他社モデルをシミュレートした音色をプリセットに搭載しました。ここでシミュレート対象としたイヤホンは、どれもハイエンドな有線イヤホン。売価で10万円〜20万円台中盤。
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(いきなり、ですが、少し脱線します)
工業製品には色々あるわけですが、何を ”ウリ” にするか、という観点で、3つの要素があると考えています。
(高額)
↑
♪ 満足感、所有感などの特別な感情を主な売り物とする → ハイエンド製品
♪ とても高い機能性を売り物とする → プロユース製品
♪ 最低限の機能が売り物 → コンシュマー製品
↓
(お求めやすい価格)
上記は、あるプロダクトを重複なく仕分ける為のカテゴリでなく、あるプロダクトがまとう要素、というイメージです。プロダクト(物理的要因)だけでなく、その売り方(マーケテ ィング)によって、プロダクトに特別な意味を(感情的・社会的な要因)与える、ということもありますし。
(脱線、ここまで)
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ハイエンドのイヤホンは、アート作品(芸術品)に近い趣を持っています。まず、パッケージの特別感からしてものすごい、、、! 開封していいのか、畏れ多いという気分にさえなりますw
そんな高価なイヤホンの音を、、、そもそも、信号の出処からして違う、、、ハイエンド有線イヤホンのサウンドを、bluetooth の TWS で出す事なんて出来るのか、、、最初は、開発者自身が半信半疑、、、そんな風にスタートした取り組みでした。
シミュレート音色を作る手順(レシピ) case of JPRiDE AJ は下記です。
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レシピ 1/ 4 〜 接続
有線イヤホンを、左右どちらかの耳に、片方だけに装着。この有線イヤホンは、ノートPCのヘッドホン端子に接続し、ストリーミングの音源を聴く。
ここで、ポータブルアンプなどを使わない理由は、ポタアンで音が劇的に変わってしまうため、ポタアンの味付けがないイヤホンの特徴を聴く必要があるからです。。。(というとカッコいいのですが、本当の理由は、開発者自身が高価なポタアンをもっていないからです。。。 ← 後日談:メッチャ高価なポタアンを、その後、お借りして使ってみました。。。全然変わりますねw)。
ある意味、ノートPCの貧弱なヘッドホン端子こそ、イヤホンそのものの音を聴く為に必要なのです。
逆の耳には model i ANC を装着。
これはスマホに接続。
そんなわけで、左右の耳はこんな感じに、違うイヤホンを接続します。
ノートPC →(ケーブル)→ 有線イヤホン → 右耳
スマホ →(Bluetooth)→ model i ANC → 左耳
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レシピ 2/ 4 〜 音楽を同時に再生... !
スマホとノートPCで、それぞれ、amazon music を起動し、まったく同じ楽曲を再生します。(なお、こうした、複数デバイスからの同時再生を行う時、amazon music のファミリーライセンス(? 的なモノ)が必要になります)
2つの異なるデバイスで、左右に別々のイヤホンを接続し、同時に同じ楽曲を再生する、、、そんな、おそらく、人生で経験する事がない貴重な経験。。。これはなかなか難しいです。同時に再生するのは至難の業で、コツが必要。
ピッタリを左右が同期した時には感動しますw
なお、当然ですが、左右の再生デバイス側では、音量を同じにします。
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レシピ 3/ 4 〜 シミュレート
model i の音像をシミュレート対象のイヤホンに近づけます。
HPS vol 1. では、合計で6機のハイエンドイヤホンのシミュレートに挑戦しましたが、そのどれにも共通した事があり、めっちゃ押出しが強い、言い換えると、音圧が高い、ってかシンプルに、音がデカいです。この点、多くのワイヤレスイヤホン製品は物足りないモノが多い、と私自身は以前から感じてました。
この後は、model i をサウンドメイクして対象のイヤホンの特徴に似せていきます。左右の違和感がなくなるまで。
私がよくやる手順としては、まずは、分かりやすいトコロから。。。
1:最初に、低域の厚みを調整してから、
2:高域、とくに、シンバル類の聞こえ方を調整、
その後、
こまかい部分(中低域〜中高域)のテイストをあわせていく、ということをします。
これを、複数の楽曲でやります。
なお、帯域のバランスを調整した後の音圧の調整では Master Gain を調整します。
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レシピ 4/ 4 〜 楽曲の選び方
最初は、
a. 全部の帯域がなっている、それでいて、音数がそれほど多くない音源を選びます。制作時期が新しい歌モノとかが使いやすいです(ドラム、エレキベース、エレキギター、シンセ、ボーカル、がはいっている曲)。
その後で、
b. 楽器の構成(バンド編成)に特徴のある、音数少なめの楽曲を試します。
a でおおよそ近づけて、b は確認、という意味合いが強いです。
また、展開があまり激しくない楽曲がいいです。長い落ちサビとかがはじまってボーカルだけになってしまう、みたいな展開がない楽曲の方がいいです。
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ざっくりした説明ですが。。。レシピは以上です。
シミュレートの作業では、なんども繰り返して調整しますので、自分の好きな楽曲で取り組みましょう。この作業が、ふつうに楽しくなります。
さて、HSP vol 1. でシミュレートした音色ですが、その結果は、、、というと、、、リリースしてもいいかな、というレベルには近づけたと思っています。
ちなみに、自分の耳だけでなくテストとして、周りのお友達に、a) シミュレート対象の実機と b) model i ANC でシミュレートした音色、2つのイヤホンを聞いてもらい、感想を聞いてみました。
実機オーナーでないヒトに聞いてもらうと、ほとんど一緒じゃね? という感想が帰ってきます。場合によっては、 model i の方がいい、という事もありました(なお当然、これは良し悪しの問題でなく、スキキライの問題です)
PS.
HPS 1 でシミュレートした実機が何か、、、
それは、ヒ・ミ・ツです。
すみませんw